【開催レポート】からくり現場改善入門セミナー(2025.12.10開催)
お金をかけず知恵を使う・簡単な仕掛けで作業を効率化
2025年12月10日に兵庫県立工業技術センターで「からくり現場改善入門セミナー」を開催しました。兵庫県内の製造業を中心に119名の方に参加いただきました。
からくり現場改善とは?
からくり現場改善は、現場の困り事や課題を見つけ出し、重力などの自然エネルギーやバネ・滑車・歯車など簡単な仕掛を使い、環境負荷を少なく、ローコストに改善するものです。その仕組みが、日本に古くからある「からくり人形」に通じるためこの名で呼ばれています。
セミナー動画(YouTubeショート)
講演
アイデアで解決する現場改善
カワサキモータース株式会社 生産本部
製造管理部 改善課 職場長 長谷川 和浩 氏
最初の講演ではカワサキモータース様から、「からくり」を使った現場改善の取組みを紹介いただきました。川崎重工業グループの同社は兵庫県明石市に工場を持ち、オートバイ(二輪車)やエンジンを製造販売しています。
同社では、かつて現場のベテランが持っていた「技」の継承が難しく、現場で自発的に困りごとを解決する文化が停滞するという課題を抱えていました。これに対し、2021年に製造部長のリーダーシップのもと、創造性を重視した「からくり機構」を使った改善の取組みを立ち上げました。
3Dプリンターなどの新しい道具の活用や、遊び心のあるユニークな命名を推奨し、若手社員が自発的に挑戦する文化を再構築しました。その結果、現場の無駄を省くのはもちろん、社員が主体的に働く環境へと進化しているとのことです。
講演の後半では、具体事例として鋼球の定量取り出し装置(俺たち、フォーボールズ´S)を製作者の江嵜氏、船井氏が紹介しました。
組立に必要な小さい鋼球を、短時間で必要数だけ取り出すのは簡単ではないですが、この装置を使えば、誰でもワンプッシュで必要数取り出せます。
からくりの製作に3Dプリンターを活用することで、試行錯誤の作業を効率的に進めました。
シスメックスの「からくり現場改善」の事例紹介
シスメックス株式会社 診断薬生産本部
第二生産部
製造課
土田 良造 氏
生産システム部
製造技術グループ
神木 秀継 氏
神戸市の医療用検査機器メーカー、シスメックス様には昨年に続いて登壇いただきました。誰もが働きやすい職場を目指す同社では、作業者の負担軽減につながる「からくり装置」が多くの工程で活躍しています。
今回は、実機を動かしながら、現場の安全性と効率性を両立させた2つの事例をご紹介いただきました。
・ S ink(スインク):
ラック&ピニオン(歯車)の機構を活用し、ハンドルを回すだけで20本の薬液ボトル(計40kg相当)を一気に攪拌します。従来17分かかっていた作業をわずか2分半に短縮し軽い操作性を実現しました。また、洗濯機用のホースを指の挟まれ防止ガードに流用するなど、身近な部材を活かした安全対策も光ります。
・ シン・フムトラマン:
作業者にとって負担だった「10kg以上のコンテナの持ち運び」を解消するために開発されました。ワンタッチで操作できるペダルや、コンテナがスムーズに流れるよう調整したガイドレールなど、現場の声を反映した細かな工夫が随所に施されています。
どちらの装置も、多額の費用をかけずに「現場の困りごと」を自分たちのアイデアで解決したユニークな取り組みです。
講演後の展示見学タイムには、実際に動く「からくり」を前に、開発者から機構のポイントや苦労話など詳細な解説が行われ、多くの来場者が熱心に見入っていました。
ゼロから始めた「からくり現場改善」の取組み
佐野MFGコンサルティング 佐野 宗章 氏
(元日産車体 湘南工場長)
最後の講演は、元日産車体の湘南工場長であり、日産車体マニュファクチュアリングで社長を務められた佐野様から、ご自身の経験をもとに『からくり現場改善』を通じた現場活性化についてご講演いただきました。
佐野様は、高価な自動化設備に頼らず、自然エネルギーや単純な機構を活用して現場のアイディアを形にし、作業負担を軽減する手法の重要性を力説されました。活動初期にはベテラン層からの反発もありましたが、まずは管理職層によるチームで成功体験を作り、その後、先入観のない若手や新入社員を主体に巻き込んでいくことで、徐々に組織文化を変革させました。
特に印象的だったのは、独自の評価制度です。投資対効果や生産性といった数字よりも、改善のプロセスや努力度、からくり機構の創意工夫を重視し、失敗しても「それはノウハウだ」とポジティブに捉えて褒める文化を醸成したことが、活動の源泉となったそうです。
具体例として、ベルトコンベアの動力や位置エネルギーを利用して部品の反転作業を自動化した装置(決まった製品宙返り半回転ひねり)などが動画で紹介されました。
「楽しみながら取り組む」ことが改善活動を継続させる鍵であると強調され、最後には経営層や管理職に向けて、短急な費用対効果を求めず、現場が主体的に知恵を出し合える環境作りを促す熱いメッセージで締めくくられました
からくり展示
登壇企業2社(カワサキモータース、シスメックス)に加えて、からくり製作用のパーツの供給メーカー4社(旭金属製作所、SUS、遠藤工業、プレテック)にご協力いただいて、実際にからくりを間近に見て触れることのできる展示会を開催しました。
ショートプレゼンテーション:
部材メーカー4社に会社と今回の展示製品の説明をしていただきました。
旭金属製作所
SUS
遠藤工業
プレテック
からくり展示会場の様子です。実物を間近に見て触れることで理解が深まります。
◉ カワサキモータース
◉ シスメックス
◉ 旭金属製作所
◉ SUS
◉ 遠藤工業
◉ プレテック
参加者の声:アンケート結果から





















