【開催レポート】「3DCAD活用のススメ!」-やってみたら使えるやんか!3DCAD(Fusion360)-(2023年5月24日開催)
-やってみたら使えるやんか!3DCAD(Fusion360)-
3DCADは大企業の設計部門では当たり前のツールですが、中小企業ではまだ活用に踏み出せていない方もいらっしゃるようです。このセミナーでは、メーカーのオートデスクから3DCADのFusion360の魅力を紹介していただいた後、全く経験がない所から3DCADに挑戦して、製品開発やビジネスで3DCADを活用している方のお話を伺いました。
2023年5月24日(水)、久しぶりの対面開催となったこのセミナーには36名の方にご参加いただきました。講演の質の高さに加え、参加者同士の名刺交換や休憩中の情報交換なども活発で、改めて対面セミナーの魅力を実感する場となりました。
以下に各講演の概要を紹介します
初めての3DCADに最適!Fusion360その魅力と中小企業での活用事例
オートデスク株式会社 関屋多門氏
事例を交えながら、3DCADの活用メリットとFusion360の優位性の解説がありました。
関屋氏は、以下のような3DCAD活用のメリットを説明しました。
- 設計した製品を3次元イメージで確認でき、情報共有やコミュニケーションが容易になる。
- 設計変更に柔軟に対応でき、迅速な修正や設計の改善が可能。
- 解析機能により、設計の検証が行え、品質向上が期待できる。
- CAMとの連携により、加工プログラムへの展開もスムーズに行える。
- 3Dプリンタを活用して設計した製品を造形することも可能。
また、各種3DCADの中でFusion360を利用するメリットを以下のように紹介しました。
- 設計から解析、加工まで幅広い3D開発環境に求められる機能を網羅している。
- 高額なCADを購入する必要がなく、手軽に3D設計を始められる。
- 3D設計と同時に解析やCAMなど幅広いツールを統合的に活用できる。
- クラウドを利用したデータ管理により、次世代のモノづくりの基盤を構築できる。
ものづくり未経験者の事務職員が3DCADを使ってみたら何ができる?
一般社団法人 神戸市機械金属工業会 塩崎 史佳 氏
工業会の事務職員をされていて3DCADには全く縁が無かった塩崎氏からは、初めての3DCAD挑戦の経験談が披露されました。
塩崎氏とFusio360の出会いは昨年9月にNIROが開催したFusion360の体験会でした。面白さを実感した塩崎氏は、その日の内に教本(Fusion360マスターズガイド)を購入し、3日の内に学習を完了したそうです。素晴らしい行動力ですが、残念ながらその後は3DCADに触れる機会はなかったそうです。そんな中で、今回のセミナーの企画が持ち上がり、再びFusio360を使うことになりました。
3DCADで何をデザインするか考えた結果、甥っ子が昔描いたドラえもんの絵を素材にして、クッキー型を設計し、3Dプリンターで造形することを決めました。
塩崎氏はFusio360で設計後、NIRO 3Dラボの3Dプリンターでクッキー型を造形し、この型を使いクッキーを焼くところまで実践されました。ものづくり未経験者であっても3DCADを使って短期間の内にクリエイティブなアイデアを実現できることが示されました。 当日は焼いたクッキーを参加者にも配っていただきました。
3DCADとの出会いとオールインワン防護服の開発
安全・環境研究会 大河 澄男 氏
大河氏は現役時代はゼネコンで「海ほたる」建設をはじめ各地の大型プロジェクトに参画されていましたが、病気療養のため引退して岡山県に農業移住されていました。
そんな中、新型コロナ騒動をきっかけに流行阻止に協力すべく、現役時代にアスベスト除染工事用に開発した防護服をベースに、医療従事者向けに防護服の開発を決意されました。この防護服は汚染エリアを隔離する壁面に埋め込まれていて作業者が着用後に壁面から分離する構造で、着脱の容易性と汚染リスクの最小化を実現します。
この防護服の鍵となる部品は壁面と防護服を分離結合するファスナー機構ですが、2次元図面で部品を外注していては納期がかかり開発がはかどりません。大河氏はこの部品を3DCADで設計し3Dプリンターで試作することで、短期間で設計と試作検証を繰り返し、開発を加速させました。
この時73歳だった大河氏が受講したのが、Fusion360のセミナーでした。とは言え全くの初心者がモデリングを行うのは簡単ではありません。その時に有効だったのがFusion360のクラウド上でデータを共有できる機能で、インストラクターから遠隔で助言を受けることができ、初心者の3DCAD活用を大いに助けたようです。
その後、医師等の協力も得て改良を重ね、コロナウイルス防護システムを創出し、副産物として片手操作のファスナーを完成させ、現在は防護システムを普及させるための方策を模索されています。
当日は開発されたファスナー部品を持参いただき、会場の方に説明いただきました。
必要に迫られて始めた3DCADがもたらしたビジネスメリットとは?
イケゾエFRPプロダクツ株式会社 池添 紀彦 氏
和歌山県みなべ町でFRPやプラスチック製のタンクを製造販売する池添氏からは、Fusion360の実際のビジネスでの活用について紹介がありました。池添氏が高く評価するのは一目で製品形状が判る3Dモデルのプレゼンテーション力と、Fusion360が標準でもつ解析(CAE)の機能です。
3Dモデル 実際の製品
池添氏の会社では、顧客の要望に基づいて多品種で少数のプラスチック製品を生産するビジネスで、顧客の持ち込む図面や仕様の提示を受けて、打合せにより仕様を満たしつつ製作可能な形状を提案し、受注し製作します。この際重要になるのは、顧客に製品を理解してもらうことで、この時に一目で形状を説明できる3Dモデルは不可欠だそうです。以前は口頭説明、イメージ図、2次元図面で提案されていましたが、出来上がりのイメージを伝えるのは、かなりの労力を要したとのことです。
左図は3Dモデルと実際の製品写真ですが、3Dモデルで製品イメージは的確に伝わります。これはFusion360を使い始めて数カ月後のモデリングです。
また池添氏はFusion360を使う最大の理由は、解析が自前で出来る点だと言います。
製品は製作前に強度が確保できているかを解析で確認します。この解析を外部に依頼することは可能ですが費用がかかります。答えを得るのに何度も繰り返し解析することや、顧客から形状変更の希望が出て再解析することも多く、Fusion360で自前で解析することが同社のビジネスに必要不可欠であるそうです。
参加者のアンケート結果