【開催終了】地プロ「医療・介護機器分野参入促進事業」 令和3年度講演会「一緒に考えませんか、医療機器の産業化~近未来・中期・長期~」(2021.11.26開催)
今回は、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)から3名の研究者、国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)から1名の研究者をお招きして講演会を開催します。
国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)は、物質・材料科学の研究を専門にしている国内唯一の公的研究機関です。これまで金属、セラミックス、ポリマーなどさまざまな物質・材料の最先端研究開発を通じて、環境やエネルギー、医療、インフラなどの問題を解決してきました。
一方、国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)は、我が国最大級の公的研究機関として日本の産業や社会に役立つ技術の創出とその実用化や、革新的な技術シーズを事業化に繋げるための「橋渡し」機能に注力しています。
今年度は、バイオマテリアル・アップデートとして生体内溶解性Mg合金の腐食抑制および骨伝導性向上のために開発された水酸アパタイトおよび炭酸アパタイト被膜の開発について紹介して頂きます。また、新規物質材料・手法による医療分野への応用可能性について、企業との共同研究を通じた産業化に向けた取り組みについて紹介して頂きます。さらに、コロナ禍で課題となっている感染症陽性患者を初期診断する移動診察車の開発およびアフターコロナでの活用についても紹介して頂きます。
◆日時:2021年年11月26日(金)13:30~17:00
◆会場:アンカー神戸 イベントホール
(〒650-0001 神戸市中央区加納町4丁目2番1号 神戸三宮阪急ビル 15階)
◆主催:(公財)新産業創造研究機構(NIRO)
◆定員:40名程度【現地参加のみ】(オンライン配信は行いません)
◆参加費:無料【要事前申込】
◆協力:関西再生医療産業コンソーシアム(KRIC)
関西医療機器産業支援ネットワーク(KMSN)
◇お問合せ:(公財)新産業創造研究機構(NIRO)技術移転部門 健康・医療部 西野(にしの)
Eメール:nishino@niro.or.jp
プログラム | |
13:00~13:30 | 受付 |
13:30~13:50 | ・「エコな医療機器の開発と事業化について」 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 外部連携部門 企業連携室 企業連携コーディネータ― 袴塚 康治 氏
【講演概要】 |
13:50~14:40 | ・「生体内溶解性Mg合金の腐食溶解速度制御ためのアパタイト被膜の開発」 (国)物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 解析・評価分野 耐食材料グループ グループリーダー 廣本 祥子 氏【オンライン講演】 【講演概要】 骨折治療用の医療用デバイスである骨ネジやプレートは、骨折治癒後には不要になる。現在使用されているTi合金やステンレス鋼製デバイスは骨折治癒後に手術で抜去されるが、抜去手術は患者への身体的負担が大きい。一方、抜去せずにデバイスを留置し続けると、金属材料のヤング率が骨よりも高いために起こる荷重遮断で骨が痩せてしまうことがある。抜去を必要としない材料として生分解性ポリマーが用いられているが、強度が低いために適用デバイスに限りがある。そこで、ポリマーより強度が高くTi合金よりもヤング率が低く、生体内で安全に溶解・吸収される金属材料としてMg合金が注目されている。海外ではMg-Y-RE-Zr合金やMg-Ca-Zn合金製骨ネジが実用化されている。現在のMg合金では、埋入初期の急激な腐食による強度低下と発生した水素ガスによる空隙の形成が課題である。骨と接して用いるMg合金の表面には、腐食速度の制御だけでなく、骨と早期に結合する骨伝導性が求められる。そこで、MgF2やリン酸カルシウム被覆が盛んに検討されている。 本講演では、生体用Mg合金の腐食抑制および骨伝導性向上のために開発した水酸アパタイトおよび炭酸アパタイト被膜について紹介する。水酸アパタイト被膜は長期間腐食抑制効果を発揮する安定な被膜として、炭酸アパタイト被膜は破骨細胞により生体に吸収される被膜として開発を行っている。 |
14:40~15:00 | 休憩 |
15:00~15:50 | ・「新規物質材料・手法の医療分野への応用可能性について」 ~機能性高分子ナノワイヤー、液中分子ジェット、ピエゾトライボロジー~ (国)物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA) ナノマテリアル分野 熱エネルギー変換材料グループ 主席研究員 後藤 真宏 氏 【講演概要】 我々は、環境・エネルギーや情報科学分野に供すべく、独自に開発したハイスループット材料合成、レーザープロセッシング、データ科学の手法を駆使して、様々なユニークな新規物質材料を開発してきた。既に産業分野への展開として、高性能ベアリングや超高感度光センサー技術が生み出され、企業共同研究に至っている。 【機能性高分子ナノワイヤー】パルスレーザーの大気中照射という簡便な手法を用いて超高感度センサーの創製を目指す。高分子原料中に発現させたい機能を有するナノ材料を含有することで、そのセンサー機能を発現させた。 【液中分子ジェット】レーザー光吸収材料を起爆剤とし、液中に衝撃波・キャビテーションバブルを誘起し、その中央部から分子ジェットを噴出させ、原料を未分解で対向する材料中に注入可能な技術にした。 【ピエゾトライボロジー】荷重を印加することで電荷が発生するピエゾ効果を利用すると従来とは異なる摩擦特性が発現することを発見した。 上記、新規に見出した3つの技術を医療機器分野に応用できないか、検討を進めている。今回、上記技術を基礎研究レベルから産業化に向けて取り組んできた情報を共有させて頂き、産業化に向けた取組を紹介したい。 |
15:50~16:40 | ・「新型コロナウイルス感染症陽性患者を
病院外で初期診断する移動診療車の開発」 (国)産業技術総合研究所 健康医工学研究部門 主任研究員 三澤 雅樹 氏 【講演概要】 胸部エックス線撮影は、多数の肺炎を疑う患者に対するスクリーニングや患者の経過観察に有効である。エックス線CT撮影は、より精密ではあるが、被ばく線量が高く、検査に時間を要するため、まずは胸部エックス線撮影での迅速スクリーニングが望ましい。しかし、新型コロナウイルス感染症陽性患者が触れた医療機器の消毒には手間がかかり、病院内で撮影すると二次感染のリスクが高まる。現在は、屋外に陰圧テントを設営し、その中でエックス線撮影を行っているが、外気温や天候の影響を受けやすく、患者が持ち抱える検出器の向きで画質が大きく変わる問題がある。 そこで、本講演では、感染防護された移動車両の車内に、診断機器とオンライン診療設備を装備し、病院外で新型コロナウイルス陽性患者の初期診断が可能なエックス線診療車(ICXCU: Infection-Controlled X-ray Care Unit)を開発した。この移動診療車では、1)医師は遠隔診察室でオンライン問診および読影が可能、2)クラスター発生施設や軽症者療養施設での患者の経過観察にも使用可能、3)医療従事者の二次感染リスクを低減可能、などのメリットがある。これを使うことで、特に大きな負荷がかかっている保健所での診断や、発熱外来クリニックの診断をサポートすることも可能である。アフターコロナでは、医療へき地の遠隔診療や、災害医療支援としての活用も検討している。 |
16:40~17:00 | 名刺交換会 |